入門・初級中国語の教材と資料(繁体字)

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ピンインで中国語

中国語をぜひマスターしたいと思っている方に、「ピンイン」から覚える学習方法のご紹介です。

【目次】

1.中国語の発音は難しい、という誤解
2.会話には漢字がない。
3.ピンインで作文してみる。
4.声調が覚えられない理由はこれかも?
5.「音の可視化」と「まるごと派」
6.ネイティブはみんな漢字だけで読めるの?
7.漢字には漢字の役割

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1.中国語の発音は難しい、という誤解

「中国語の発音は難しい!」とよく言われますが、それは本当でしょうか?そもそも、なぜ「中国語の発音は難しい」と感じる人が多いのでしょうか?

レッスンで先生に何度も発音を直されるから?
自分で発音した言葉が、現地の人に上手く伝わらないから?

でも、もしかしたら、発音の学び方のコツがうまく伝わっていないだけかもしれません。

 

中国語を正しく発音するための学習には、次の三段階があります。

漢字のピンイン(台湾なら注音)を覚える。
ピンイン(注音)を中国語らしく読むための規則を覚える。
①②を意識しながら読む。

 

①②は知識の問題。③だけがテクニックです。「中国語の発音は難しい」という誤解は、①②と③がごちゃ混ぜになっていることから、生まれているのです。

 

具体例をあげてみます。(台湾華語を注音で学んでいる方は、ピンイン→注音と読み替えてくださいね。)
例えば、「先」という漢字の読み方を覚える場合。

xiān(xianの第一声)というピンインを覚える
母音が「ian」の場合の「a」は、「ア」ではなく「エ」に近いという規則を覚える
①②を意識しながら「先」という漢字を読む。

という手順になります。

①②は知識。③だけがテクニック。①②を覚えれば、発音の間違いはぐっと減ります。

 

外国人が日本語を学ぶ場合に置き換えて、考えてみましょう。例えば「今日」という単語。

フリガナは「きょう」
kyouのように、「ou」という母音が続く時は、「おー」と長音にして読む
「きょー」を正しく発音する。

 

②は、日本人なら無意識にしていることですが、外国人は規則として覚えなければなかなかできません。③で長音(伸ばす音)を、充分な長さにするのは、外国人にとっては結構大変。練習が必要です。

①②は知識。③だけがテクニックです。

 

ピンインを覚えずに中国語をマスターしようとするのは、外国人が日本語を学ぶ際に、漢字の読み方をひらがなで書けないのと同じ。「え、それじゃ無理だよ!」と思いませんか?

先生に発音を直された時に、①②③のどの段階でつまづいているのかがわかれば、同じミスは減りますよね。
①②は知識なので、独学でも身につきます。教材もたくさんあります。中国語レッスンにかけられる時間や費用には限りがあるので、この知識の部分をできるだけ自分で解決しておけば、レッスンの時間を有効に使うことができるのです。

「中国語の発音は難しい」という誤解も、きっと減るはずです。

 

2.会話には漢字がない。

中国語をマスターしたい、という方のほとんどが、会話ができるようになりたい、と思っていらっしゃると思います。読み書きや翻訳ができるようになりたい、と思われている方でも、「会話は別にどうでもいい」という方は、少ないでしょう。

でも、会話の時には、「漢字がない」のです!

教科書には、必ず漢字が書かれています。その漢字を覚えたら、その単語や文型を、覚えたような気になります。でも、それはまだ道半ば。だって、会話には、漢字がないのだから。

聞こえて来るのはだけです。それで、相手の言いたいことを理解しなければなりません。自分の言いたいことを伝える時に使うのも、!スムーズに会話ができるようになるためには、漢字がなくても、と意味とを直接結びつけられるようになることが必要なのです。でも、普段、漢字を中心に覚えていると、会話の時も、頭の中でいちいち漢字変換してしまうので、会話がスムーズに進みません。

そもそも、「漢字」だけしか覚えていない単語は、会話では出番がありません。会話で使えるのは次の二つだけなのです。

1.ピンインを覚えているもの
2.ピンインは覚えてないけど、何度も聞いて音をしっかり覚えているもの

2だけで、日常会話がスムーズにできるまで語彙を増やすのは大変!シャワーのように中国語を浴びられる環境と並外れた記憶力(子供並?)が必要です。

環境や記憶力が充分でない場合、ピンインは必須。会話の音に近いもの、それがピンインだから。

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3.ピンインで作文してみる。

では、どうすればピンインが覚えられるのでしょうか?効果的な方法は、「ピンインで作文」です。例えば、次の文をピンインで書いてみるとします。

我 是 日本人。

中国語を、半年・1年学んでいても、「あれ?”本”は二声だっけ?(×)」等と悩む方が時々いらっしゃいます。発音は結構スムーズでも、ピンインをきちんと覚えていない方も多いのです。

入門段階では、こんな文型練習もよくしますね。

你是日本人嗎? 我們都是日本人。 他不是日本人。

こんな文型練習を繰り返す間、気が遠くなるほどの回数、「日本人」という漢字を書きます。この時間、もったいないと思いませんか?

「日本人」という漢字は、もうすでに書けるのだから、「中国語でも同じ漢字でいいんだ」ということを一度だけ確認すれば、充分です。後は、

Wǒ shì Rìběnrén。

のように、ピンインで作文練習を続けるのです。そうすれば、10回「Rìběnrén」を書く頃には、このつづりを覚えているはず。一方、私たちが、「日本人」という漢字を10回書いたところで、新しい知識は何も増えていません。

もちろん、進出単語や、日本語にない漢字、日本語と意味の違う漢字は、時々書いた方がよい。でも、書くのはそれだけです。「我」「你」のようなよく使う語、すでに覚えた語は、ピンインだけ書く方が時間の節約になりますね。

こんな感じです!

ピンインで作文の写真

こういう練習を続けて、「ピンインだけで書ける。」「ピンインだけを見ても意味がわかる。」という単語や文が増えていけば、必ず会話力は上がります。

それに、こんな風にピンインだけをしっかり勉強してるつもりでも、無意識に漢字も半分ぐらい覚えている事が多いものです。逆に漢字だけで勉強してると、ピンインはほとんど覚えられないのが普通。

ピンインでの作文、ぜひ、お試しください。

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4.声調が覚えられない理由はこれかも?

「ピンインで作文」は、PAPAGOのレッスンの中で、繰り返しご紹介しているのですが、時々、「ピンインもちゃんと書いて覚えようとしているのに、声調がどうしても覚えられない」というご相談を受けることがあります。

そんな時は、「”我 是 日本人”をピンインで書いてみてください」とお願いします。すると、「声調が覚えられない」という人に多い書き方は左側。右側と比べてみてください。

左側は、まず「Wo shi Ribenren.」と書いて、それから、声調記号をちょんちょんとまとめてつけています。この方法で、たくさんの漢字の声調を覚えるのは大変です!

中国語は、漢字一文字ずつがひとつの単位。だから「我wo第三声」「人ren第二声」等をワンセットにして覚えないと、いつまでも声調があやふやなままだし、何より応用がきかないので、とっても効率が悪い。

声調を覚えやすい書き方は右側。「Wǒ → shì → Rì → běn → rén。」と一文字分ずつ声調記号まで書いていくのです。そうすれば、「漢字とつづりと声調」をワンセットで覚えられます。

「人ren第二声」をまとめて覚えておけば、この後、「人生」「家人」「人員」と新しい語が出てきた時も、「人」はもう読めるので新しく覚えるのは残りの一文字分だけ。

ね、効率的でしょ?

せっかくピンインを覚えるのなら、騙されたと思って(笑)、この方法、ぜひ試してみてくださいね。

 

5.「音の可視化」と「まるごと派」

この記事は、ブログで連載したものに加筆修正しているのですが、そこには、声調を含めてピンインを覚えるという方法を実践されている方からのコメントも色々いただいています。

通訳の後藤ゆかりさんは、ピンインで書くトレーニングを今も続けられていて、それを「音の可視化」と表現されています。

後藤さんのブログ↓
中国語の音を可視化してみませんか?

ツインズマミーさんからいただいたコメントには、「拼音&声調ごと覚える派」と書かれていました。中国語の一部の側面だけを覚えるつまみ食いではなくて、声調まで含めて全部覚える「まるごと派」の仲間がこれから増えたらいいな、と思います。

ツインズマミーさんのコメントはこちらから

プロの通訳としてずっと活躍されている方と、子育てしながら勉強を続けていらっしゃる方と、、立場はそれぞれ違っても、同じように中国語の音を大切にしてピンイントレーニングを続けていらっしゃるのです。

 

6.ネイティブはみんな漢字だけで読めるの?

「中国語は、ピンインで覚えた方が効率がいい」と言うと、時々、

でも台湾人や中国人は漢字だけで読んでますが・・・

という質問を受けることがあります。ネイティヴの先生の中には、稀に、ピンインでメモすることを禁止して、「ネイティヴと同じように」漢字だけで読むことを求める方もいらっしゃいます。

では、本当にネイティヴは漢字だけで中国語を読めるようになったのでしょうか?

ここにも、大きな誤解があります。

確かにネイティヴの大人は、漢字だけで読んでいます。でも、彼らだって最初から、漢字だけで読めたわけではありません。台湾人同僚に聞くと、小学校に入って最初に教わるのは注音。それから、漢字は知ってるものだけ書いて残りは注音、という時期がしばらく続き、その後で漢字だけで書けるようになるのだそうです。

絵本や子供向けの教材には、注音がフリガナのようについています。新しい漢字の読み書きを覚える時にも、注音が手がかりです。(中国でも、小学校に入ると、ピンインをしっかり勉強します。)これは、小学校2年生の連絡帳ですが、黄色い〇で囲んだ部分には、まだ書けない漢字が注音で書かれていますね。(1994年の連絡帳:時間割表

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つまり、ネイティヴが大人になって、あれだけの数の漢字を、ピンインや注音なしに、それだけで読み書きできるのは、ピンインや注音で勉強してきた過程があるから。彼らだって、最初から漢字だけで読めたわけではないのです。大人になってからも、書けない漢字は、注音で書いています。

そうは言っても・・・

「ピンインや注音の歴史は新しい。その前は、みんな漢字だけで読めたのでは・・・???」

というのがちょっと気になりますね。でも、ここにも、ちょっとしたトラップがあるのです。

 

中国で今のピンインを正式に使い始めたのは1958年、注音は1918年です。その前の試行段階まで合わせても歴史は浅い。それ以前は、漢字だけ。

でも、その頃、文字の読み書きは庶民のものではありませんでした。労働の必要がないとか、家庭教師を雇えるような経済力があるとか、人並み以上の記憶力を持つとか、そういう条件が揃って初めて、漢字を自在に操ることができたのです。

20世紀になって、注音やピンインが学校教育に取り入れられたことにより、ようやく漢字の読み書きが庶民のものになりました。すでに音声でのコミュニケーションができるネイティブでさえ、たくさんの漢字の読み書きを覚えるのには、ピンインや注音が必要だったのです。

外国人である私たちが、今、漢字だけで中国語をマスターするには、清朝以前の特権階級並みの条件が必要なのかもしれません。

「ピンインも注音も覚えずに、漢字だけで中国語を勉強しようとしている日本人がたくさんいるよ。」

と台湾人同僚に言うと、目をシロクロさせていました。

「えーっ、それでどうやって発音を覚えるんですか???」

だって、ネイティヴでさえ、最初から、漢字だけで読めたわけではないのですから。

 

7.漢字には漢字の役割

もちろん、漢字には漢字のよさがあります。

ひとつひとつの文字にぎゅっと凝縮されている意味を想像するのも楽しいし、繁体字の並びも美しい。悪名高い(?)簡体字の功績も大きいと思っています。

漢字の役割は意味を表すこと(表意文字)。音を表すのはローマ字やひらがな・カタカナ、注音(表音文字)の役割。

中国の方言差がなかなか縮まらないのも、ひとつの漢字が指しているもの(意味)に、それぞれの地方の呼び方(音)を自由に対応させているから。日本語の中で漢字が活躍できるのも、同じ理由ですね。

 

ピンインや注音を覚えずに、漢字だけで中国語の発音を覚えようとするのは、例えば車の絵だけを見て、carというつづりなしに、この英語の発音を覚えようとするようなもの。その方法でも、最初のいくつかの単語や文は覚えられるのでしょうが、すぐに壁にぶつかってしまいます。

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レッスンや日常生活で耳にする言葉にも限りがあります。発音のお手本のない単語を会話で使いたければ、辞書に書かれたピンインを頼りにするしかないのです。

今日、先生に教わった、あるいは街で聞いた中国語の発音を、何の手がかりもなしに翌日再現できるとしたら、それは大変な才能だと思います。英語の発音でつまづき、音痴で歌も嫌いだった私が、中国語を使って仕事ができるようになったのは、ピンインという手がかりがあったから。

漢字には漢字の役割があります。

例えばややこしい文型を理解する時は、文字数が少なく、ひと目で意味をとらえられる漢字の方がずっといい。

漢字には漢字の大切な役割があるのに、「発音を覚えるツール」という見当違いの役割を担わされては気の毒。その役割はピンインや注音に任せて、漢字は漢字の得意分野で活躍して欲しいと思います。

 

こんな風に考えていくと、漢字とピンイン(注音)という二種類の表記方法をもつ中国語は、とても学びやすい言葉なのかもしれません。

 

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(2017年11月のブログ記事に加筆修正したものです)